特集 「腰痛症」の要因と理学療法
直立二足歩行と腰痛症―抗重力姿勢の影響
権田 絵里
1
Gonda Eri
1
1京都大学霊長類研究所形態進化分野
pp.99-105
発行日 2007年2月15日
Published Date 2007/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551100643
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はじめに
普段,われわれが人類の進化の道のりを考えるとき,高い知能やコトバの獲得,そしてそれらを土台とした文化の形成や文明の発展など,万物の霊長としての栄光の歴史に焦点が当てられるのが常であり,栄光と引き換えに負った代償を顧みることは少ない.
例えば,「腰痛」もその1つである.あまりにも身近であるため,われわれはそれらがヒトであるがゆえの宿命的な苦難であることを意識していないが,われわれの祖先が直立二足歩行を始めたときから延々と受け継がれてきた負の遺産1)である.人類が知性や技術,コトバといった進化の恩恵にあずかるのは,実はそれよりもずっと後のことである.
本稿では,ヒトという動物の特殊性や進化の道のりという視点から,人類と直立二足歩行への不適応現象,特に腰痛との関わり合いについて探ることを目的とする.
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