臨時増刊特集 これだけは知っておきたい診断のポイント
III.消化管疾患
胃潰瘍 VS 胃癌
高木 國夫
1
Kunio TAKAGI
1
1癌研究会付属病院・外科
pp.1892-1893
発行日 1980年11月20日
Published Date 1980/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216801
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なぜ鑑別が問題となるか
胃疾患のなかで最も多い胃潰瘍は良性であるに対し,胃癌は悪性で両者の鑑別は,胃疾患の診断および治療の上で最も重要な問題である.
胃癌には,肉眼所見上,多くの形態を示すものがあるが,隆起を示す胃癌には,胃潰瘍のなかでも特殊な隆起を伴う瘢痕(たとえば幽門前庭部の対称性急性潰瘍瘢痕の一部にみとめられる)との鑑別が必要なほかは,鑑別診断も問題はほとんどない.胃癌のなかで癌巣内に潰瘍形成を有する癌(早期癌では,IIC+III,III+IICであり,進行癌ではBorrmann II,III,IV)と胃潰瘍との鑑別が日常診療の上で最もしばしば経験するものである.両者間で最も重要な点は早期癌で潰瘍病変をもったものと胃潰瘍との鑑別であって,X線検査や内視鏡検査で良性潰瘍と思われても,一度は必ず癌ではないかと念頭におくことである.
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