臨時増刊特集 これだけは知っておきたい診断のポイント
II.呼吸器疾患
胸腺腫 VS 奇形腫
岡 厚
1
Atsushi OKA
1
1東京大学医学部・第2外科
pp.1866-1867
発行日 1980年11月20日
Published Date 1980/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216789
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なぜ鑑別が問題となるか
この両者は,いずれも前縦隔腫瘤を形成し,多くは健診における胸部X線撮影により発見される.手術前に鑑別が問題となるのは,胸腺腫には特異な合併疾患を伴うことがあり,その面での検索が必要となる.術前に不顕性のものが,術後顕性化してくる場合もある.合併疾患としては,第1に重症筋無力症(ほぼ20〜40%に合併,以下MGと略記),第2には赤芽球癆(ほぼ3〜5%に合併),ごく稀にCushing症候群,低γグロブリン血症などがあげられる.つぎには摘除可能性が問題となるが,これには上大静脈撮影や気縦隔撮影が有用である.
いずれも手術適応であるが,浸潤,癒着がなく容易に摘除可能のとき,胸腺腫で合併疾患(とくにMG)を伴う場合には胸腺全摘を併せ行う必要がある,合併疾患を伴わないときも併施すべきか否かについては異論も多いが,奇形腫ではまったく顧慮する必要はない.浸潤型胸腺腫では可及的に広汎合併切除を行うべきであるが,奇形腫系の胸腺ゼミノーマやその他の悪性奇形腫ではその必要がない,前者は放射線感受性が高いためであり,後者は過大な手術の効果を期待できないためである.
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