紫煙考
タバコと消化管
梅田 典嗣
1
Noritsugu UMEDA
1
1国立病院医療センター・消化器科
pp.1804-1805
発行日 1980年11月10日
Published Date 1980/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216772
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患者へのためらい
胃潰瘍と診断した患者にそれを告げると,いかにも残念そうな顔をして「タバコは喫ってはいけませんか」とたずねられることが多い.そのたびごとに「それは喫わないほうがよいでしょう」と私は答える.そのように答えながら,私は患者に対する同情とともに私自身ある種のためらいを感ずる.
喫煙の害が声高に叫ばれる昨今でも愛煙家の数は多く,なかなかやめられない人の多いのが現実である.タバコと肺癌との密接な関連はすでにいいつくされ,また呼吸器系,心血管系に対する悪影響は論をまたない.しかしながら,消化器疾患との関連は意外とはっきりしていないのである.愛煙家の患者に対し潰瘍があるからといって禁煙を宣告するのはいと易いてとであるが,本人にとっては生活パターンを変えることにつながるのできわめて重大なことである.
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