紫煙考
喫煙と脳卒中
家森 幸男
1
,
木原 正博
2
Yukio YAMORI
1
,
Masahiro KIHARA
2
1島根医科大学・病理学
2島根難病研究所・日本脳卒中予防センター
pp.968-970
発行日 1980年6月10日
Published Date 1980/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216572
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はじめに
喫煙,わけてもcigarette smokingが,さまざまな循環器疾患の重要なrisk factorであることは古くから知られており,すでに19世紀の後半より,狭心症との関係を論じた報告が見うけられる.有名な米国のFramingham studyによれば,心筋梗塞による死亡率は,喫煙群において,非喫煙群の実に3倍に達するという1).しかも,こうした喫煙の害は,ひとり喫煙者にとどまらず,胎児や,passive smokingとして非喫煙者にまで及ぶことが懸念されており,近年禁煙推進運動が国際的な広がりを示し,喫煙が一大社会問題としてクローズアップされていることは,けだし自然のなりゆきといってよい.しかし科学的にみれば,喫煙と健康については未解決の問題がまだまだ多く残されており,この方面への関心を一層高める研究を促進する意味からも,WHOが今年1980年を国際禁煙年と定め,「Smoking or Health-choice is yours(喫煙か健康か―選ぶのはあなた)」として一大キャンペーンを開始したことは,大いに歓迎すべきことといわねばならない.
さて,喫煙と健康に関する研究はこれまでに膨大な量に及ぶが,循環器疾患に限ってみれば,その大半は欧米で最大の死亡原因である虚血性心疾患に関するものである.
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