今月の主題 慢性肝炎をめぐる諸問題
経過と予後
HBs抗原陽性例と陰性例の比較
太田 康幸
1
,
吉田 智郎
2
,
大野 尚文
3
,
恩地 森一
1
1愛媛大学医学部・第3内科
2日本鋼管福山病院・内科
3日赤松山病院・消化器センター
pp.864-866
発行日 1980年6月10日
Published Date 1980/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216548
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はじめに
慢性肝炎の病因として,容認されているものを,頻度別に高いものから順にあげると,肝炎ウイルス,薬剤,自己免疫,その他となるが,全症例のおよそ80%に肝炎ウイルス感染との関連が注目されている.
肝炎ウイルスについては,A型,B型,非A・非B型ウイルスの存在が明らかにされているものの,現実に確認されているウイルスは,A型とB型の2つにとどまり,非A・非B型ウイルスの分離・同定には,なお若干の月日を要するもようである.ところで,近年明らかにされたところによると,A型肝炎での遷延・慢性化例は皆無に近いことから,慢性肝炎の大部分は,B型か非A・非B型肝炎ウイルス感染との関連において調査をすすめる必要がある.したがって,HBs抗原陽性と陰性の慢性肝炎を比較するということは,B型に対する非B型,つまり非A・非B型ウイルス肝炎と,肝炎ウイルスには関係がない薬剤や自己免疫を病因として起こる慢性肝炎を加えて対比しつつ,両群の差異を明らかにすることとなろう.しかし,本稿では,肝炎ウイルスとの関連が深い例に限り,B型例と非B型例とにつき,自験症例を比較した成績を述べることとする.
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