今月の主題 甲状腺疾患診療の進歩
検査
甲状腺機能検査のすすめ方
飯野 史郎
1
Shiro IINO
1
1昭和大学医学部・藤が丘病院内科
pp.678-683
発行日 1980年5月10日
Published Date 1980/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216507
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はじめに
甲状腺疾患を診断するには,まず,甲状腺疾患の種類と特徴を熟知し,甲状腺機能検査法に精通することが必要である.甲状腺疾患には表1に示すごとく,甲状腺の機能異常を伴うもの,甲状腺の炎症,甲状腺の腫瘍などのほかに,最近ではサイロキシン結合蛋白異常症や甲状腺ホルモンに対する細胞受容体異常症などもある.甲状腺機能亢進症は過去においてはバセドウ病と同義語であったが,現在では,それ以外に原発性,二次性(下垂体性など)および三次性(視床下部性)甲状腺機能亢進症を含んだ集合名詞となっていることを理解するべきである.
甲状腺機能検査法の種類は,表2に示すごとくで,血中甲状腺ホルモン濃度および蛋白への結合状態の検査,甲状腺ホルモンに由来する代謝的反応をみる検査,甲状腺におけるヨード代謝をみる検査,甲状腺機能の調節機構に関する検査,免疫学的検査,組織学的検査,その他の検査がある.これらの検査法の一つ一つは甲状腺機能のすべてを表現するものではなく,血中甲状腺ホルモン濃度,甲状腺の生理的機能,甲状腺の形態などというように,甲状腺機能の一面を表現しているに過ぎないものである.したがって,甲状腺疾患の診断にあたっては,いずれか一つの検査法で足りるものではなく,これらの検査法のなかからその疾患の特徴を表すいくつかの検査法を選び,これらの検査成績を組み合わせることが必要である.
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