臨時増刊特集 これだけは知っておきたい検査のポイント 第2集
VI.血液検査
53.赤沈
磯貝 行秀
1
1慈恵医大第3内科
pp.1754-1756
発行日 1979年10月20日
Published Date 1979/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216157
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異常値を示す疾患
赤沈の異常は「促進」と「遅延」に大別される.表1は赤沈の正常値を示したものである.数値の検討より「促進」の判定は容易であるが,「遅延」の意味する内容の理解は必ずしも容易ではない.異常値としての「遅延」は赤沈抑制的に作用する要因の介在を考慮する必要がある.従来臨床的に関心が持たれてきたのはいうまでもなく「促進」を示す赤沈であったが,今後,異常値としての「遅延」についても注目すべきであることを強調したい.
正常者で赤沈1〜2mmをみることは少なくない.しかし,問題なのは種々の症状を有し,体温・白血球数およびCRPなどが明らかに異常を示すにもかかわらず,赤沈が「遅延」ないし正常域にとどまるときである.たとえば,血管内凝固症候群を伴ってくると,血漿フィブリノゲンは低値をとり,フィブリン分解産物(FDP)は増加をみるが,赤沈抑制的に作用し「遅延」をみる.いいかえれば全体的臨床像との釣合いで赤沈促進の予想される病態で,実際には意外に赤沈がすすまなかったり,見かけの正常値にとどまったり,「遅延」を示す場合に遭遇することが決して少なくないのである.このような一見奇異に思われる赤沈の動きは,赤沈抑制機構の発動が考えられ,広義の「遅延」のカテゴリーに属さしめてよい.この場合,数値のみで「遅延」を判断することはできず,赤沈の経過と臨床像との解離を見出すことが重要となる.
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