正常値
赤沈
磯貝 行秀
1
1慈恵医大・阿部内科
pp.586-588
発行日 1967年4月10日
Published Date 1967/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402201753
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赤沈は,白血球数,血圧および体温測定などとならんで日常臨床でもつともよく用いられるきわめて簡単な検査法の一つである。電気泳動法による蛋白分画の定量,超遠心法,免疫電気泳動法,ゲル濾過法,その他多くの血清蛋白分画法がいちじるしい進歩をみせているが赤沈はいまなお重要な臨床検査法としての地歩を占めている。とくにスクリーニング・テストとしての価値はいつこうに減じていない。赤沈のメカニズムについては,血漿蛋白分画の研究によつて漸次解明されつつあるがまだ不明の点も少なくなく,ここ数年はなお研究の対象となりうるものと思われる。
健康者の赤沈は,比較的狭い範囲の数値内に恒常性をたもつているが,病的状態ではきわめていちじるしい異常値を示し,かなり鋭敏な検査法である。したがつて非特異反応ではあるが,臨床症状,身体的所見および諸検査成績などと比較検討すれば,鑑別診断,疾患の活動状況,治療および予後の判定にはたす役割はきわめて大であるといえる。赤沈が広く応用されるにいたつたのは,1918年Fahraeusが妊娠の早期診断に応用して以来で,とくに1921年,Westergrenが検査術式を確立してから急速にひろまつてきた。一方,わが国でとりあげられたのは昭和の初期で,結核症の診断予後の判定に重要な検査法として登場してからのことである。
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