今月の主題 酸塩基平衡の実際
酸塩基平衡異常の臨床・循環不全
Lactic acidosis
後藤 文夫
1
,
藤田 達士
1
1群馬大麻酔学
pp.1498-1499
発行日 1979年10月10日
Published Date 1979/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216078
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乳酸の形成とその意義
組織で最も重要な基質である糖は,嫌気的代謝系であるEmbden-Meyerhof回路を経てピルビン酸になる.ピルビン酸は,好気的条件下においてはクエン酸回路(TCAサイクル)に入りCO2とH2Oに代謝されるが,血流障害や低酸素状態では,ピルビン酸からアセチルCoAへの転換酵素であるpyruvate dehydrogenase活性が阻害されるので,lactate dehydrogenaseに触媒されてNADHにより乳酸に還元される.このとき生じたNAD+は嫌気的解糖をさらに進行させるのに利用される.この乳酸形成系でのエネルギー産生量はクエン酸回路を介する好気的代謝の約1/20であることから,多量の解糖が必要となり,その結果生じた乳酸が血中に増加して乳酸血症(lactic acidosis)になる.
乳酸のpKは3.86であるから,通常は体液中でほぼ完全に解離しており,H+を生ずるのでlactic acidosisを起こす.正常人でも過激な運動を行うと乳酸の異常増加をきたすが,肝で急速に代謝され10分以内に正常化する.すなわち,代謝異常が生じ乳酸産生が増加した場合,肝および腎機能が正常に保たれているか否かがlactic acidosisの悪化に大きく影響する.乳酸は肝においてCO2とH2Oに代謝されるが,一部は解糖系を逆行して糖新生に利用される(1式,2式).
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