今月の主題 内科医に必要な精神科の知識
概念と診断
神経症
岩井 寛
1
1聖マリアンナ医大神経精神科
pp.1336-1338
発行日 1979年9月10日
Published Date 1979/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216038
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はじめに
神経症はノイローゼという言葉で,戦後非常に一般化された.それはアメリカ・ヨーロッパにおいてもそうであるように,文明化が進めば進むほど複雑になる社会機構・人間関係などの歪みをうけて,発症しやすくなる疾患だからである.そうした意味では,人間のもつ疾患の中で,最も社会の在りかたを直接的に反映し,個人の生活史を映し,さらに文化の影響をうけ,人間の生存をありのままに描き出す疾患ともいえる.
さて,neurosis(Neurose,独;névrose,仏)という言葉を歴史の上でつくり出したのは,スコットランドのW. Cullen(1777)である.しかし,彼は今日われわれが用いるような意味をもってneurosisという言葉を用いたのではなく,疾患の全体をcachexiae(消耗性疾患),pyrexiae(熱性疾患),locales(局所疾患)にneuroses(神経疾患)を加えて分類を行ったのである.しかもそのneurosesは多彩なものを含んでいて,卒中による麻痺,舞踏病,てんかん,心気症,ヒステリー,そのほか心悸亢進やヒステリーなど,さまざまな疾患を総括した名称であった.
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