今月の主題 内科医に必要な精神科の知識
よく遭遇する症候
不眠
松本 啓
1
1鹿児島大・神経精神医学
pp.1318-1319
発行日 1979年9月10日
Published Date 1979/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216032
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はじめに
不眠は,発熱などと同じく,単なる症候であり,その原因はいろいろである.不眠は,あらゆる診療科において,最もよく遭遇する症候であり,総合病院の入院患者の愁訴のうち,不眠が各診療科に共通して上位を占め,また年齢,性別を問わず,不眠が多く認められる5).したがって,その不眠の原因は何かということを明らかにすることが大切である.不眠は多くの場合,他の症候と一緒に出現するが,他方,不眠だけが唯一の症候として長期にわたるものもかなり多くみられる.そこで,不眠を主訴とする患者を診察する場合に,診断上参考になることは,次のような事項であり,そのためには、なるべく詳しい病歴を聴取する必要がある.病歴聴取に際しては,性別,年齢,性格,家族および職場の環境,仕事の内容,対人関係,飲酒歴,家族歴,既往歴,現病歴,さらには,不眠とはいっても,どのような型の不眠であるのか,就眠障害か浅眠,あるいは中断,早期覚醒かを尋ねておく.つぎに内科的診察および諸検査を行い,必要があれば精神科的診察も併せて行う.このようにして不眠の原因を明らかにすることによって,はじめて個々の症例の不眠に対する的確な治療が行えるわけである.また,不眠という症候を端緒にして,細心の注意をはらいながら検診することによって,思いがけない原因を発見することもある.
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