今月の主題 腸疾患の臨床
腸疾患の臨床
小腸—鑑別診断のプロセス
川井 啓市
1
,
多田 正大
2
1京府医大公衆衛生
2京都第一赤十字病院第3内科
pp.1138-1142
発行日 1979年8月10日
Published Date 1979/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402215988
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
小腸は栄養素の消化吸収の場であり,従来から消化吸収機序の解明のための種々の研究がなされてきている.本誌でも昨年5月号(vol. 15 no. 5)において「消化.吸収の基礎と臨床」のテーマが取りあげられ,最近の興味ある知見が紹介されたことは記憶に新しいが,本稿では小腸疾患に対する形態的アプローチのあり方をめぐる最近の2,3の話題について概説してみたい.
ところで,小腸疾患の頻度は食道や胃,大腸疾患の頻度と比較して著しく低いことはいうまでもなく,他の消化管や肝臓,膵の華々しい研究に比べ,小腸に対する研究は症例の数のうえからも地味なものであったことは否定できない.また,小腸は口からも肛門からも距離があり,しかも腹腔内を上下,左右に迂回して腸管が重なりあうため,病変の診断法がむずかしいことも,小腸疾患に対する形態的アプローチの遅れの原因となっている.しかし最近では,胃や大腸の完成されたX線・内視鏡検査法の手技を小腸疾患の診断のために導入するとともに,小腸の解剖学的特殊性をふまえた独自の検査法も工夫されてきており,徐々にではあるが,小腸疾患の形態診断法の進歩がみられてきている.これらの診断法をめぐる詳細な紹介は各論に譲るとして,本稿では小腸疾患の診断の組み立て方を中心に概説したい.
Copyright © 1979, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.