今月の主題 癌と免疫
その他の癌免疫療法
腫瘍細胞抗原
岡安 健至
1,2
,
小林 博
2
1北大癌研
2北大病理
pp.1028-1029
発行日 1979年7月10日
Published Date 1979/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402215962
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はじめに
臨床的にみた癌免疫療法の主体は,細菌類,多糖類などによる,いわゆる,非特異的免疫療法(nonspecific immunotherapy)であって,腫瘍細胞をワクチンとして用いる,いわゆる特異的免疫療法(specific immunotherapy)の試みは意外と少ない。特異的免疫療法の試みは歴史的には最もふるく,患者から手術摘出された癌組織細胞をformalinで処理し,同一患者に戻し免疫するという方法であったが,それらの成績はいずれもみるべきものはなかった.もともと自己の体内に増殖を許している癌細胞を抗原として用いる免疫療法の試みはナンセンスとする見方がある.なぜなら癌細胞の増殖を許していた生体が,その癌細胞によって新たな免疫賦活を起こすという可能性は考えにくいからである.しかし,手術後,あるいは然るべきオーソドックスな治療ののち,すなわち腫瘍宿主関係の改善のみられた時点での特異的免疫療法が一定の治療効果をもたらす実験モデルはいくつか提示されるようになってきた.臨床的にも,近年,非特異的免疫療法の普及と相俟って,再び特異的免疫療法の見直しを図ろうとする試みが少なくない.その多くは免疫療法の主役的位置を占めるには至っていないが,非特異的免疫の不足を補い,免疫療法としてより完全な治療効果を期待する狙いのもとに,合併療法の一環として行われている(図).
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