天地人
なるほど
天
pp.745
発行日 1978年5月10日
Published Date 1978/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207888
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患者は,病に堪える人という意味で,patientと呼ばれているが,そのpatientと接していると,patienceを要求されるのは,むしろ医者のほうだと思われる場合が少なくない.
例えば胸痛を訴える患者が来たとしよう.それが発作的にくるものであり,しめつけられるような左前胸部痛であり,しかも数分でおさまるものであれば,狭心症であろう,という見当はつく.ところが,これだけのことを患者から聞き出すのが実は至難の業なのである.胸痛の起こり方など,聞けば聞くほどあいまいな返事しか返ってこないし,胸痛の持続時間にいたっては,あるときは1日中痛かったような返事もするし,あるときはすぐよくなったような返事になることもある。「一体どっちがほんとうなんですか? サァサァサァー」と歌舞伎もどきに迫りたいところだが,そうすればするほど,患者はますますドギドキするので,ここは医者のほうがじっと我慢である.
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