天地人
論語知らずの論語よみ
天
pp.1485
発行日 1977年10月10日
Published Date 1977/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207423
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タキシードを作らされることになった.もちろん並の服より高いが,同時にアクセサリーも違ってくる.靴はエナメルにしなければならないし,ワイシャッやカフス釦も特別なものを用意する必要がある.これは,日本の礼服でも同じことで,このときの袴は,やはり仙台平でないと,さまにならない.礼をつくしているという心意気は,結局形で表すしかないので,所詮は金がかかるのである.
茶の湯は礼の極致であろう.東洋風の礼があれほど洗練されたものはまたとないかもしれない.だからこそ,多くの人の心をとらえるのであろう.しかし,金のかかる点でも並大抵ではない.まず,四季おりおりの高価な茶器が必要であるし--安物では優雅でないのである--,着物から履物まで,茶の湯のT・P・Oに合わせなければならない.つまり,年に1回も着ないようなものでも,茶の湯の儀式の一朝有事には備えておかねばならぬということになる.
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