今月の主題 消化・吸収の基礎と臨床
診断
内視鏡からみた消化・吸収
川中 三千雄
1
,
堤 京子
2
1東女医大消化器内科
2東女医大内科
pp.654-656
発行日 1978年5月10日
Published Date 1978/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207866
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はじめに
消化管の内視鏡検査の日的は,本来,消化管の"器質"的変化の発見とその質的診断にあった.これを「第1の内視鏡学」とすれば,「第2の内視鏡学」ともいうべき内視鏡によれば,「第2の内能"検査がある.しかし,まだ後者の歴史は新しい.「消化・吸収」の主たる場は小腸であることはいうまでもないが,臨床の場でこの小賜粘膜を直接検索する手段は,手術,剖検を除けば,かつては盲目生検によう小腸粘膜採取法1)が唯一のものであった.しかし,1971年に小腸全域への内視鏡挿入が世界にさきがけて日本ではじめて成功2)してからは,内視鏡を用いての「消化・吸収」の本格的な研究も可能になった.表は内視鏡を川いて今日行われている「消化・吸収」に関する諸検索法の詳細をまとめたものである.
検索手段としての内視鏡の利点は,①手術その他の操作なしに,非観血的に腸管を直接検索できる.②その際,生体での腸管の状態が動的に観察でき,また限局性の粘膜の変化(消化・吸収に関して)をキャッチすることも可能である,③直視下に粘膜を狙撃生検できる.④経過観察ができる,など数多い.なかでも生体の腸内腔をファイバースコープを通して肉眼的に直接観察できることは最大の利点といえる.しかし,従来の内視鏡検査法のように,単に長時間空腹にした空虚な腸管の内腔をみるだけでは,そこから得られる「消化・吸収」に関する情報は極めて乏しい.
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