今月の主題 小腸
綜説
小腸の消化吸収
細田 四郎
1
1京都府立医科大学増田内科
pp.1511-1519
発行日 1967年12月25日
Published Date 1967/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403110434
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Ⅰ.はじめに
栄養素が吸収に先立って腸粘膜を通過し得る程度まで分解される過程が消化である.ここに働く消化酵素は酵素の一般特性である基質特異性,至適pH・温度,Michaelis-Menten式,ZymogenとKinaseなどをもっている.
消化と吸収についての研究は古く,既にClaude Bernard(1865)1)が脂肪の吸収に胆汁よりも膵液の影響が大であることをみた.Reid(1898)2)は栄養素の吸収に滲透や濾過のような物理的機序と絨毛上皮細胞のactiveな働らきが同時に必要なことを述べた.これはKrogh(1946)3)及びUssing(19474),19495))によって,筋細胞における能動駆逐として能動的膜輸送の概念が提唱される実に半世紀も前のことであった.この同時性は今日しばしば忘れられ,in vitroの実験下の能動吸収が生体の栄養素吸収のすべてであるかのように誤解されている.吸収速度と化学構造との関係をはじめて示唆したのはCori(1925)6)の各種単糖類の吸収比較である.しかし,彼は特異的といったがactive(能動的)とは云わなかった.Verzar(1936)7)がMcDougallの助けを得て著した“Absorption from the Intestine”は腸管吸収に関する初めてのモノグラフであるが,その後Wilson(1962)8)次いでWiseman(1964)9)の著書が現われるまでの四分の一世紀にも未だその価値を失っていない.
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