私の本棚
新しい消化器病への手引書
柴田 一郎
1
1嶺町医院
pp.588
発行日 1978年4月10日
Published Date 1978/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207849
- 有料閲覧
- 文献概要
私は以前から消化器病の診療にあたって,講義や教科書で得た知識と実際に患者を前にした場合とのギャップが他の領域よりも大きいと感じていた.戦後まもなく,杏雲堂病院の塩谷卓爾先生の「胃腸病診療の実際」(と記憶している.今は手もとにない)という本が出たので,さっそく読んだ.診察の経験を重ねていく中に,さらに内容の具体的な理解ができるだろうと思って再読してみた.
しかし,日がたつにつれ,どうしても実情とは少し違っていると感じるようになった書その後,大家の書かれた何冊かの教科書を手にしてみた.通読できる量ではないので,必要な部分を拾い読みしてみたが,なかなか納得がいかない.そのうちに胃癌多発国であるわが国では当然のことであるが,二重造影という技術も開発され,臨床家の消化器病への関心は俄然そちらへ向けられてゆき,内視鏡や生検も異常な発展を見て,現在のような早期胃癌の診断体系が世界にさきがけてほぼ完成された.私も人並にテレビレントゲンを入れ,その分野の名著と目される本も読んで,技術的にもなんとか私なりの体系ができたように思う.しかし日常,消化器症状を訴える多数の患者を前にして,ひろく消化器病全体の新しい実態を知るに手頃な本はないだろうかという想いが念頭を去らなかった.ちょうどそんなとき,医学書院からあいついで2冊の訳本が出版された.
Copyright © 1978, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.