開業医学入門
私と医学書
柴田 一郎
pp.2201-2205
発行日 1976年12月10日
Published Date 1976/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207002
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今の若い方には想像もつかないと思うが,私が大学に入った年に独ソ戦が始まり,洋書というものは当時日本の店頭にあるものしか手に入らないという時代で,なかには合格発表の日に仙台の丸善にまだRauberのAnatomieの教科書があると聞いて,すぐ仙台まで買いに行った友人もあった.とにかく入手難には泣かされたものであった.臨床を習う頃になると,すでに当時の定本とされていた呉,坂本先生の内科書(現在も冲中先生の改訂版として未だに使用されている)なども売り出されても,即日売り切れという状態であった.こうした状態は医学領域ばかりではなく,文学その他すべての領域に及んだ.そのためか,本はあるうちにできるだけ買っておかねば,という気持ちが習性となってしまい,今でもちょっとめぼしい本があるとすぐに飛びつき,読んでよかったと思うこともあるし,がっかりすることもある.そういった体験的遍歴のあとの,私なりの医学書のすすめとでもいったことを書いてみようと思う.
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