今月の主題 胸痛の診かた・とらえかた
胸痛を伴う主な疾患
縦隔腫瘍
浜田 朝夫
1
,
松田 昌子
2
1大阪市立桃山市民病院
2大阪市立桃山市民病院内科
pp.374-375
発行日 1978年3月10日
Published Date 1978/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207788
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縦隔腫瘍と胸痛
縦隔腫瘍の主訴として胸痛が重きを占めるとは必ずしもいえない.むしろ縦隔腫瘍の特徴は,その疑いをもたすような自覚症状がなく,検診などの機会に,偶然に胸部x線上に異常陰影を認められ,検査をはじめる場合が多い.
しかし,胸痛は血行閉塞,嗄声,嚥下困難,咳,リンパ節腫脹などとともに縦隔腫瘍の主要な自覚症状である.すなわち,腫瘍が無自覚的に増大し,縦隔内の周辺臓器に圧迫,侵襲を及ぼした場合である.縦隔はそのゆるやかな結合織の内に上部縦隔には胸腺,上部食道,気管,胸管,大動静脈,横隔膜神経,反回喉頭神経,交感・迷走神経が,中・後縦隔にも心嚢,心,主気管支,肺動静脈など多くの臓器が輻輳して存在する.したがって,これらの臓器へ影響が及べば胸痛の原因になりうる,その痛みは胸骨の後または肩甲間部に訴える胸膜性の疼痛から,肋間神経さらには脊髄神経内へ病変が進展すれば強い痛痛を伴う.痛痛がはじまり,それが急に,かつ持続性に増強するような場合は、腫瘍の性質が悪性であることを考えなければならない.
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