臨時増刊特集 診断基準とその使い方
V.内分泌・代謝疾患
Cushing症候群
井村 裕夫
1
1京大第2内科
pp.1902-1907
発行日 1977年12月5日
Published Date 1977/12/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207548
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概念
Cushing症候群は,1932年Harvey Cushingによってpituitary basophilismの名称のもとに初めて報告された,肥満,満月顔,高血圧,糖尿,月経異常,骨粗鬆症などの一連の症状をきたす疾患である.その後こうした症状は,副腎皮質よりのグルココルチコイド(とくにコルチゾール)の分泌亢進により起こることが明らかとなった.すなわち,Cushing症候群はコルチゾール過剰症であるといえる.しかし,1960年以降になって肺癌などの悪性腫瘍がACTHを産生する,いわゆる異所性ACTH産生腫瘍においては,コルチゾール過剰症があってもCushing症候群の症状を伴わない場合が多いことが知られるようになった.したがって,現在Cushing症候群はコルチゾールの分泌亢進に基づく肥満,満月顔などの臨床症状を呈するものに対して用いられる.一方こうした症状の有無にかかわらず,コルチゾールの分泌亢進がある場合,コルチゾール過剰症(hypercortisolism)と呼ぶことができる.
Cushing症候群またはコルチゾール過剰症を成因別に分類すると表1のごとくである.このうち下垂体ACTH分泌亢進症は,Cushing病とも呼ばれ,下垂体に塩基好性または色素嫌性細胞腺腫を認めるものと腺腫が見られないものとがある.前者は下垂体性,後者は中枢性とも考えられる.
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