診断のポイント
Cushing症候群
井林 博
1
1東大・中尾内科
pp.1130-1132
発行日 1967年8月10日
Published Date 1967/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402201875
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20,30代の女性によくみられる
本症はいまからちようど35年前,Harvard大学,Peter Bent Brigham Hospital外科主任Harvey Cushing教授により"Pituitary basophilism"の名で発表された。近年各種合成皮質ステロイド剤の長期大量療法の副作用として外見まつたく似た臨床像がしばしばみられることから逆に本症が広く臨床家になじみの深いclinicalentityとなつてきた。本症患者の頭蓋レ線フィルムを凝視する白髪痩身長躯の同教授の肖像はいまもなお,同大学の重厚な灰色の医学図書館と,陽ざしのとどかぬ仄暗いPeter Bent BrighamのSeminar講堂にかかげられている。Cushing教授は当時すでに本症12例中剖検8症例の下垂体と副腎の病変,特に副腎についても8例中過形成6例,正常および小腺腫形成各1例と正確に記載しているが,現在では本症の病態生理はむしろ副腎皮質からのcortisol(Fk)過剰分泌によることが明らかにされている。したがつて現在では同教授の創唱した下垂体性のACTH分泌亢進による両側副腎過形成の症例(現在ではCushing病ともよばれる)のほか,副腎の腫瘍病変すなわち片側性腺腫やがんなどによるcortisol過剰分泌によつてもまつたく同様な、臨床像を呈し,一般にこれらを包括してCushing症候群とよばれている。
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