洋書紹介
—S. M. Rapoport—Medizinische Biochemie
岩村 健一郎
1
1東海大第3内科
pp.1519
発行日 1977年11月10日
Published Date 1977/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207432
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生命の流れの中「もの」をとらえる
Mediziniche Biochemieを読む機会を得た.学生および医師のための教科書としてまとめられたものである.筆者は西ドイツ留学以来すでに10数年を経るが,何かとドイツ医学にかかわりをもたざるを得ない環境におかれている.書評をもとめられた理由の一つはそこにあろうし,もう一つはおそらく筆者が生化学を専門にする者でないことにあろう.つまり門外漢であっても,一医学徒として本書に興味をひかれるものがあるかどうか,もしあるとすればどのような点にあるのか,について答えを求められているのであろう.素人の妄言を許していただこう.一言でいえば大へん興味深く読んだということである.いや,面白さにひかれてつい読み通してしまったというのがいつわらざるところである.何故だろうか.自省をそのままに記すことが答えになると思うし,また答えになってほしいと願うものである,
有機化学や無機化学をふまえ,生化学という一つの部門を標榜するからには,それなりの理由があることは言を侯たない.生体は目に見えずとも,絶えず息吹いている.一刻としてとどまることをしらぬ動きの中に,「もの」が集約され,離散する,そして全一なる生命が脈打つことになる.生命の流れの中に現れては相をかえ,やがて消えて行く「もの」の生命への昇華を,それぞれの場において,そしてまた場のつらなりのままにとらえ,記述したのが本書であるといえないだろうか.
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