演習・X線診断学 血管造影写真読影のコツ・9
小腸・大腸疾患
甲田 英一
1
,
平松 京一
1
1慶大放射線診断部
pp.1293-1300
発行日 1977年9月10日
Published Date 1977/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207370
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はじめに
小腸,大腸は管腔臓器であり,その疾患の大部分は粘膜面から発するものです.これらの粘膜面から発生する疾患を,血管という漿膜面から進入していくものを造影することによってその診断を進めていくことは,現在われわれが使用できるX線装置の分解能をもってしては,不利な面があることは前回でも述べました.現在,われわれがこれらの粘膜面の疾患,とくに癌の診断に際して血管造影を行う意義は,癌の深達度とその管腔外への浸潤範囲,および血管解剖を知ることだといったとしても過言ではないでしょう.これらの決定は,術式や予後の判定に重要なかかわりをもっているからです.また,癌と炎症性疾患や肉腫との鑑別に有力な武器となることはいうまでもありません.
このほかに小腸,大腸の血管造影を行う適応として,消化管出血,塞栓症,炎症性疾患(結核,憩室炎,潰瘍性大腸炎,クローン病)などがあります.とくに潰瘍性大腸炎,消化管出血の血管造影時には,それぞれカテーテルより副腎皮質ホルモン,血管収縮剤を注入することによって,診断と治療を兼ね行うことができます.
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