小児と隣接領域 小児脳神経外科
乳幼児硬膜下血腫(水腫)
早川 勲
1
1都立墨東病院脳神経外科
pp.268-269
発行日 1977年2月10日
Published Date 1977/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207086
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硬膜下血腫(水腫)は小児,とくに2歳以下の乳幼児に多い疾患である.硬膜下に溜る液体の性状により血腫subdural hematomaといったり,水腫subdural effusionといったりするが,両者をひっくるめて広く硬膜下液貯溜subdural collection of fluidということもある.看過されると生命にかかわるだけでなく,治療されても不徹底であれば,以後の精神・運動発達に重大な障害をもたらす.乳幼児期にはとくに注意すべき疾患のひとつということができよう.原因はさまざまであるが,大きく分けて頭部外傷によるものと,そうでないもの-髄膜炎,血液凝固障害,栄養障害などによるものとに2分することができる.硬膜下被膜(新生膜)の有無により慢性型と急性型に区別されるが,両者の問には密接な関係がある.すなわち,急性型から慢性型への移行や,慢性型の急性増悪をみることが少なくない.また,原因となる頭部外傷は必ずしも直接打撃とは限らず,むち打ち損傷のような間接外力であってもかまわない.したがって,本症診断に際して,頭部打撲の有無は絶対的鑑別点とはならない.最近ではまたBattered child syndrome(Kempe, C. H.,1962)に本症を合併することが少なくないとされている.
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