開業医学入門
薬剤について思うこと
柴田 一郎
pp.1582-1585
発行日 1976年11月10日
Published Date 1976/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402206842
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現在はどうであろうか,私たちの学生時代には,大学は診断を教えるところであり,実際の治療は卒業後に学ぶべきものという教え方であった.そのため,卒業直前に海軍に入り,部隊に配属されて第1日めから診療を命ぜられたときには,アスピリンも0.1g飲ませればよいのか,1g投与すべきかもわからないで苦労したことがある方その時代からいわゆる薬品欠乏時代にかけて,板倉武先生の「治療学摘要1)」という名著があり,これを何度くり返して読んだかしれないが,そのつど非常に役立った思い出がある.現在でも私は古い薬についての知識のほとんどを,この本に負うことが大きいと思っているし,今でも時々参考にすることもある.現在は新薬の洪水で,しかも評価の定まらないものまで含まれて取捨選択に迷う時代になったが,こういった形の良書がないのが寂しい.
今回は,私のささやかな臨床医としての生活で体験した若干の思いがけなかったことども,また,これからはこの薬剤を主に使ってゆきたいといったようなことなど,断片的ではあるが,思い出すままに述べて,御参考になれば幸いと考えている.
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