今月の主題 痛みとその対策
鎮痛療法の適応と効果
ブロック療法
藤原 孝憲
1
1神奈川県立こども医療センター麻酔科
pp.643-645
発行日 1976年5月10日
Published Date 1976/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402206559
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はじめに
17世紀後半にエジンバラのWoodが,注射器と針とを世にひろめた頃より,痛みをとる目的で神経ブロックを行った記載がみられる.神経ブロックは主として外科手術に伴う無痛法として用いられていたが,1931年,Dogliottiが癌患者のクモ膜下腔にアルコールを注入して除痛に成功して以来,神経ブロックは痛みを主とする疾患の治療に一層注目されるようになった.そして,ペイン・クリニックが全世界に普及する推進力となった.
最近,西ドイツのMainz大学のGerbershagenら1)は,過去4年間に7,800例の神経ブロックを行っており,その30%は診断的ブロックだが,治療成績が決して満足できるものではなかったとして,その理由を次のようにあげている.①痛みそのものがもつ複雑な性質,とくに慢性経過をとる痛みに対する知識が不足していること,②痛みの機序や伝導路に関する知識が不足していること,③局麻の効果および適応に対する知識が不足していること,④治療前の診断や適応に関する妥当性の欠如,⑤各専門分野の意見の導入が不十分であったこと,⑥ブロックの効果の記載が不十分であったこと,⑦ブロックに費す時間が十分なかったことなどを反省材料として,ペイン・クリニックの構成メンバーとして麻酔科医以外に各科専門医,精神科医,心理学者などを加えて組織化することを強調している.
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