開業医学入門
意外に多い甲状腺疾患(その2)
柴田 一郎
pp.552-556
発行日 1976年4月10日
Published Date 1976/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402206532
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前回には,私たちの一般内科診療所でも,甲状腺疾患の頻度は多いということ,みつけ方などについて強調したつもりであるが,甲状腺腫というものは,いくつもの病気があって,なんとなく分りにくいもの,煩雑で専門家でなければ分らないものという観念がまだまだ残っているように思われる.しかし,現在ではその分類も明確になり,分かりやすくなったし,特殊な病院でなくとも,ある程度までは見当をつけることが可能であり,どんなものを専門医に回すべきかの判断もできるようになってきた.ことに甲状腺癌は,その大部分(90%)が予後の良い癌であるとはいえ,手遅れにしてしまったのでは死亡を免れ得ない.したがって私たちは,どの患者についても常に頸部触診を怠らないようにしたい.甲状腺の病気には,主として形態学的な立場からしか診断のつけられないもの,つまり機能異常とはあまり関係のないものと,甲状腺ホルモンを主とした血液化学的諸検査,すなわち機能面の検索から診断のつく疾患群とがある.後者の疾患群のばあいさらに形態的な面をからませてゆけば,ほぼその全貌をつかむことができよう.以下,その概略を述べたいと思うが,私たちの設備ではできない検査,たとえば131I-uptake,超音波による検査,最近視床下部から発見されたTRH(Thyrotropin Releasing Hormone)に関する検査は専門家に依頼するというたて前で触れないこととする.
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