開業医学入門
意外に多い甲状腺疾患(その1)—診察のとき必ず頸をみよう!
柴田 一郎
pp.413-415
発行日 1976年3月10日
Published Date 1976/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402206481
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おろそかにされている甲状腺
内科医は一般に診察のとき,甲状腺を忘れている傾向がないだろうか.阿部1)も述べているように,頭の方から順にみてゆくさい,頸部のリンパ節あたりは,触れてみることが多いものだが,その時ついでに前の方の甲状腺をみる習慣もぜひ身につけたいものである.
私は何年か前まで,甲状腺といえば,まずバセドウ病のみが頭に浮かんできて,粘液水腫以下のいろいろの病気はむしろ稀で,めったに遭遇するものではないとばかり思いこんでいた,また実際20年ほど前までの甲状腺疾患に関する知識は,現在のそれに比べるとお話にならないほど低い水準にあったことも事実である.私はたまたま昭和30年頃,何かの雑誌で亜急性甲状腺炎に関する記事を読み,その数ヵ月前にたてつづけに,それと覚しき患者を2,3例診ていたので,ああこれがあの時の病気だったのかと感じたしだいだが,その時はそれだけのことで,副腎皮質ホルモンがよく効くものだという印象を持ったにすぎなかった.しかし,その後昭和44年藤本2)のモノグラフを読んだりするうちに,甲状腺の疾病そのものに興味をもつに至ったが,さしあたり自分でできる検査といえばBMR程度でこれとても時間的に無理であり,血沈くらいをみるに止まった.
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