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異常値を示す疾患
網赤血球数に異常を示す疾患について表に示した.網赤血球数は図にも示したように新しく産生された赤血球である一正常人では赤血球の寿命が約120日であるので,その喪失に見合う赤血球の産生が行われており,一定数の網赤血球が認められ,その数は全赤血球のうちの0.5〜1.0%にあたる.しかし生体から異常な量の赤血球の喪失(貧血)が起こり,それによる低酸素血症が起こると,図に示したような経路が正常に働いていれば,その喪失に見合うだけの赤血球産生の増加が起こり,網赤血球の異常な増加が起こる.その典型的な例が表に示した各種の溶血性貧血と急性失血性貧血である.その他,新生時期には生理的に網赤血球は2〜6%と増加する.また髄外造血がある場合や摘脾後にも増加が認められるが,これらは赤血球系産生の増加を示すというよりはむしろ前者では網赤血球の造血部位からの放出の程度の変化,後者ではそのクリアランスの程度の変化によるものと思われる,またビタミンB12,葉酸や鉄欠乏の治療初期には網赤血球の急激な増加が起こり,これによって逆に原疾患の診断が確認される.
図に示したような経路が十分に働いていないような貧血では,貧血相応の赤血球産生の増加,ひいては網赤血球数の増加が見られない.その典型的な例はエリトロポエチンの作用点である骨髄幹細胞になんらかの障害があると考えられている再生不良性貧血であり,その他に表(II-2)にあげたような疾患がある.またエリトロポエチンの産生に障害のある場合,たとえば腎疾患などでも同様である,さらにいったん赤芽球へ分化してから網赤血球へ成熟していく経路になんらかの障害のある場合,つまりビタミンB12,葉酸,鉄欠乏,鉄芽球性貧血などでも同様である.
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