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MLF症候群のTrias
MLF症候群(syndrome of the median longitudinalfasciculus;内側縦束症候群)は,脳幹の内側縦束(図1)に限局した病巣によって起こるもので,次のTriasを特徴とする症候群である1)(図2).①ある方向への側方共同注視の際,一側の眼球は内転障害を示す。この内転障害眼と同側に病巣がある.②他側の眼球は外転に伴って,その眼球だけの水平性眼振(monocular horizontalnystagmus)を示す.その急速相は外転する方向に一致している.③輻輳機能は正常である.これがTriasである.この現象が,一側の側方注視に際してのみ現われる時には,一側性MLF症候群といい,一側の側方注視時のみならず,他側への側方注視時においても同様な現象が現われる時には両側性MLF症候群という1).なおMLFには図1のように,脳幹から脊髄に達して,前索内側部を下行し,脊髄前角のおもに内側部に終る下行線維があり,これは躯幹の姿勢や体の平衡に関係している.しかし,MLF症候群では上記のTrias以外に,体の平衡や姿勢には,とくに目立った異常を示さないのが普通である.
このMLF症候群はいろいろな原因によって起こるが,欧米では一側性MLF症候群は血管性障害が,両側性MLF症候群では大多数が多発性硬化症によるといわれている.わが国では多発性硬化症は少ないが,一側性MLF症候群ではやはり血管性障害が多く,そのほか脳幹腫瘍,頭部外傷後2)などである.両側性MLF症候群が,わが国においても,欧米と同じように多発性硬化症によるものが多いか否かは,今後の検討を要する問題と思われる.
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