今月の主題 手術適応の問題点
他の治療法との関係からみた手術適応
舌がん
鷲津 邦雄
1
1国立がんセンター・口腔科
pp.1262-1263
発行日 1974年10月10日
Published Date 1974/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402205600
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今日の舌がんに対する治療の主体は放射線治療である.大部分が扁平上皮がんであることから放射線感受性が高く,効果的である.一方,手術は,実質欠損と機能障害を伴うことと,頸転移の可能性が大きいということから,適応選択に際して不利な立場に立たされている.かつて舌がんでは,放射線治療と手術が治療成績を競った歴史があるが,ただ単に両者の治療成績の対比のみでは適応の優劣は決らず,しかも治療成績にさほど差が認められていない.両者同程度の治療成績であるならば,少しでも機能保存が可能な放射線治療を優先すべきであるとの主張が支配的である.
国立がんセンターでは,過去11年間に300例を越す舌がん(UICCの国際分類で中咽頭がんに含まれる舌根がんを除く)の治療を行なってきたが,一次治療のほとんどは放射線治療であった.その結果は,3年粗生存率62.3%,5年粗生存率54.6%である.この成績は,放射線治療後の再発あるいは頸転移に対する救済手術(salvage operation)による結果を含み,舌がん治療に果たす手術の役割をみることができよう.
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