今月の主題 手術適応の問題点
手術適応のカレント・トピックス
脳出血
古和田 正悦
1
1秋田大外科
pp.1234-1235
発行日 1974年10月10日
Published Date 1974/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402205591
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はじめに
高血圧性脳出血に対する手術は,1903年,Cushingによって行なわれており,近代脳神経外科の発祥のうちにその歴史をみることができる.脳神経外科の課題の1つとして関心が持たれるようになったのは1930年以降で,手術適応についてすでに論じられている.脳血管撮影が臨床に導入された1940年後半から多くの報告がみられ,基底核出血に限らず,小脳や橋出血の手術成功例2,3)すらも報告された.1961年になってMcKissockら4)が外科的治療例と保存的治療例の予後を比較し,外科的治療が必ずしも保存的治療にまさるものではないと報告し,その手術適応に関して論議をよんだ.
わが国では蔭山らの報告5)以来散発的に報告され,桂ら6)は高血圧性脳出血の外科的治療を文献的に考察してその問題点を指摘したが,積極的に試みられるようになったのは,1960年以降光野7),金谷8)らの先駆的な業績がみられてからで,保存的治療で絶望視される症例も救命されるようになった.頭蓋内血腫を外科的に除去するのが脳神経外科医の基本的立場であり,わが国で高血圧性脳出血のみが「絶対安静」を金科玉条として往診治療に終始し,例外的に取り扱われたこと自体,特異的であったといえよう.最近の外科的治療の進歩は著しく,McKissockら4)の見解を批判するに足る成果9,10)が得られており,早期の移送,脳血管連続撮影の普及につれ,高血圧性脳出血の外科的治療は,脳神経外科医にとってルーチンな診療手技として,より一層普及すべき時期にある.
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