診療相談室
腹水を伴う急性肝炎の診断
涌井 和夫
1
1東北大・山形内科
pp.532-533
発行日 1974年4月10日
Published Date 1974/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402205403
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質問 腹水を伴う急性肝炎の診断,ことに鑑別診断にっいてご教示ください. (横浜市 T生)
答 急性肝炎に腹水を伴うことはまれで,重篤な徴候とされている.Turnerによれば,急性肝炎で腹水をみることは,0.2%,すなわち千人に2例程度の割合であるとされ,Luckeによれば死亡した急性肝炎症例では,そのほぼ60%に腹水を認めたとしている.腹水の発現が急性肝炎症例にみられる時は,劇症,ないし亜急性肝炎(Lücke,Mallonyらの意味での)をまず考え,予後の重篤なことを覚悟し,慎重な治療が望ましい.ただ,急性肝炎例での腹水の発現はたしかに予後の重篤さを示し,一般には発現後数日で死亡するとされているが,時に軽快,回復をみることもあり,この中には,その後急速に壊死後性肝硬変に進み,結果的には予後の悪かったものも,その後全く正常生活に復した症例も経験される.腹水の発現は急速であることが多い.また,その回復例では,腹水の消失も2,3週間内に起こることが知られている.この点,慢性肝疾患末期に発現する腹水とは多少ニュアンスの異なりがある.こうした場合の腹水の発現機序の詳細は不明であるが,死亡例では,多く急性黄色肝萎縮の型をみるので,急激な肝細胞壊死に伴う血液膠質滲透圧の変化が他の各種の要因中では注目されよう.
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