今月の主題 転換期に立つ検診
検(健)診実施上の問題点
妊婦,乳児,三歳児健診
松崎 奈々子
1
1高島平保健相談所
pp.990-995
発行日 1973年8月10日
Published Date 1973/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402204854
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はじめに
表題の事項を述べるに当たって,東京都保健所勤務という立場から,母子健診とはどういうものかを考えてみたい.母子は,母から子へ,さらに母と子という継がった時間の中で,常に健全であることが望まれるとすれば,母,子ともに断面的な時点での健診,あるいは保健指導でよしとすることは許されないと思う.
将来の人生を左右する第一段階である,出生時,めざましい発達をとげる乳幼児期などの健康は,そのほとんどが,母の健康であるか否かによって大きな影響をうけることとなる.このような意味で,母と子と継がった形での保健対策がのぞまれるのである.健康ということは,極めて個人的な事柄に属することではあっても,行政の立場で,この保健を支援することが,昭和40年制定の母子保健法に義務づけられている.このために,各種の行政健診が行なわれているが,健診(健康診査)は個人のその時点での健康状態の確認と,経時的な健康増進,健康阻害因子の排除を目標に行なわれなければならない.当然,健診のみでなく,事後の保健指導,経過観察,疾病の早期治療への援助などが行なわれねば健診の完結とはいえないと思う.母子保健法の理念からいえば,行政健診の対象は母と子の全員であるが,各個人はこの行政健診をうけるのみではなく,個々の状況に応じ,随時各種医療機関で健康診査をうけられることがのぞましい.
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