今月の主題 転換期に立つ検診
検(健)診実施上の問題点
精神衛生検診
石原 幸夫
1
1神奈川県精神衛生センター
pp.988-989
発行日 1973年8月10日
Published Date 1973/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402204853
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精神衛生と検診
精神衛生の領域で"検診"という言葉が使われたことは未だかつてない.この領域の専門家からみれば,精神衛生検診なる表現はまことに奇異に感ずる.精神医学を基盤としている精神衛生は,身体医学とは同様にゆかないという先入観が極めて強いからである.事実また身体医学とは異なる面が多い.
精神衛生は精神的健康という言葉に置き換えられるが,精神疾患を中心にして,いつも人間の精神現象と対峙している.いうまでもなく精神現象は身体現象と異なる特徴をもつ.精神現象には精神とか心とかいう「もの」(実体)は存在せず,働きとしての現象が存在するにすぎない.したがって,現象の主体としての精神は客観化し測定することはできない.従来の検診という言葉がこの領域と疎遠な理由の1つがここにある.
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