今月の主題 化学療法剤—現状とその使い方
化学療法剤の選び方・原因菌不明の場合
尿路感染症
石神 襄次
1
1神戸大・泌尿器科
pp.842-843
発行日 1973年7月10日
Published Date 1973/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402204809
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はじめに
尿路感染症はその他の感染症と異なり,尿という極めて容易に採取しうる検体があるため,それを分離,培養することによって比較的簡単に原因菌を同定しうるものと考えられている.しかし,種々の原因によって原因菌不明のまま治療を施行しなければならない場合も少なくない.
原因菌不明の場合としては,まず第1に症状が急性でかつ自覚症状が激しいため,起炎菌の同定をまつまでにとりあえず治療を開始しなければならない場合が考えられる.第2には自覚症状,尿所見その他から明らかに細菌性尿路感染症と推察されるにもかかわらず,被検尿の培養結果が陰性に終わっている場合である.このさい,尿沈査の鏡検では明らかに細菌を証明していることも少なくなく,大部分が来院までになんらかの形で化学療法をうけていた症例である.この両者は,同じように原因菌不明といっても,その病像が根本的に異なっており,薬剤の選び方も自ずと異なった観点からみる必要がある.そこでここでは,この2つの場合について,それぞれの化学療法剤の選び方を述べることにする.
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