診療室
大出血に際して輸液,輸血を容易に行う考案並びにその方針
田中 武
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1日本大學醫學部産婦人科教室
pp.659-661
発行日 1953年11月10日
Published Date 1953/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200915
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まえがき
産婦人科疾患とは出血に對する戰である,と言われる程その出血が致命的となる疾患が多い。此の樣な場合には時を移さず輸液,輸血を行うことは患者救出の重要なる手段である。然るに大出血時には必然的に起るショツクの爲に,血壓は下降し,一方血管壁の緊張低下も起り靜脈を殆ど認め得なくなることが多い。斯る患者に際して,吾々は額に汗して幾度か靜脈穿刺を試みるが,終に斷念して他の方法に移らざるを得ない樣なことが往往にしてある。又之が爲に患者をして死に至らしめたと思われる樣な症例を聞くこともある。然らば皮膚切開に依つて輸液血を行うべし,と説く者もあるが,焦りと不馴れの爲に容易に成功せず,又化膿,エンボリー等の不祥事を惹起することが間々ある。飜つて考えて見るのに前述の樣な場合にこそ,輸液血を直ちに行つてショツクの可逆性より不可逆性への移行を防止しなければならない。余は數年前より補液壓を靜脈壓より低下させることにヒントを得て,殆ど總てのシヨツクにある患者の靜脈内注人に成功した。此の考案は簡單であり特別の器具を必要としないので,その輸液血の方針と共に茲に發表して諸賢の御批判を仰ぎ度いと思う。
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