今月の主題 新鮮脳卒中
診断
ベッドサイドの脳出血の部位診断
沓沢 尚之
1
1秋田県立脳血管研究センター
pp.32-33
発行日 1973年1月10日
Published Date 1973/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402204550
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ベッドサイドで脳出血と診断した場合,これに満足せず,次には出血は脳のどこにあるか,積極的に部位診断につとめなければならない.この事は以後の治療方針の決定や生命および機能予後の判定にきわめて重要である.もちろん,脳内血腫の大きさ,ひろがり,進展度や周囲組織への影響など精細な診断は脳血管撮影を施行しなければ困難であるが,神経学的徴候から推定できる場合も少なくない.
ベッドサイド診断の順序は,まず,脳病巣のlateralityすなわち病巣は左半球か,右半球か,次いでその部位は大脳か,橋か,あるいは小脳かを知ることから始まる.脳出血のうち最も頻度の高い大脳半球基底核部出血と診断した場合は,血腫は内包を境として,それより外側のいわゆる外側型(被殻出血)か,内包の内側のいわゆる内側型(視床出血)か鑑別しなければならない.この鑑別をベッドサイドで行なうことは必ずしも容易ではないが,外科的治療の適応決定には不可欠なので,個々の神経学的徴候を綿密に観察すると共に必要に応じては躊躇せず脳血管撮影を施行すべきである.最後に続発性脳室出血の徴があるかどうか,脳嵌入の有無およびこれによる二次的脳幹部障害を来たしているかどうかなどがポイントとなる.これらの診断はできるだけ迅速に行なわなければならない.一般に高血圧性脳出血の40-60%は死亡するとされるが,早期診断,早期治療により救命できるものが増加しつつある.
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