治療のポイント
甲状腺に腫瘤を触れるとき
伊藤 國彦
1
1伊藤病院
pp.2266-2269
発行日 1972年12月10日
Published Date 1972/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402204519
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腫瘍か否かの鑑別について
甲状腺に腫瘤をふれたときは,甲状腺内に腫瘍が発生していると考えてよい.甲状腺腫の形状の上からの分類からいえば結節性甲状腺腫である.これに対して甲状腺組織が増殖肥大したものが,びまん性甲状腺腫である.筆者は結節性甲状腺腫はすべて甲状腺腫瘍と考えている.ただ甲状腺腫が結節性かびまん性かの区別が困難な場合がある.すなわち甲状腺に腫瘤がふれるが,これが腫瘍であるか否かがはっきりしないことがある.多くはびまん性甲状腺腫の一部分が硬結様になった場合である.これは多くは慢性甲状腺炎の甲状腺腫にみられるがときには亜急性甲状腺炎でも腫瘤のようにふれることがある.もし腫瘍でなく炎症性のものであれば,手術は無用の手段であるばかりでなく,かえって術後に機能低下症を発生するおそれがあるので,腫瘍か炎症かは厳重に区別しなければならない.多くの症例では触診により診断は容易であるが,場合によっては鑑別が困難なことがある.このような場合に頸部X線写真や甲状腺シンチグラムが診断の一助になるが,それでも困難な場合は試験切除が必要になってくる.
甲状腺の腫瘍では,ごくまれな機能性腺腫の一部を除けば甲状腺機能の異常はみとめられない.したがって甲状腺腫があり,機能亢進なり,低下なりの機能異常がみとめられれば甲状腺腫瘍はほぼ否定してもよい.
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