Editorial
呼吸器病学の流れ
中村 隆
1,2
1東北大
2山形大・内科
pp.2099
発行日 1972年11月10日
Published Date 1972/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402204489
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戦前の呼吸器病学をふりかえってみると,呼吸器疾患をめぐる多くの関心は肺結核症をはじめとして,細菌感染症にその大部分が注がれていたといっても過言ではなかった.このことは呼吸器病学にかぎったことではなく,細菌をいかにたたくかは嘗って医学の主眼とするところであったためとうけとれた.が,戦後,化学療法剤の開発が急速にすすめられ,他方,外科療法,BCGなどの普及も手伝って,なお問題は残されているとしても,一応肺結核症をはじめとする感染症が抑圧されるようになり,合日では,必然的にこれら感染症の後遺症として残された肺変化や非細菌性の催炎体,あるいはまた大気汚染や年齢因子などと関連する諸変化に大方の関心がむけられるに至った.
このような背景を考えると,肺機能の研究が戦後1940年頃から活発にすすめられてきたことは近年における呼吸器病学の変貌を反映し,必然的なものであったとみることができる.実際,近年における呼吸生理学の進歩はめざましく,かつて肺活量のみが日常臨床上の尺度として川いられてきた当時に比較すると,1950年代には新器類の進歩とあいまって換気力学的機構の解析をはじめとして拡散機能やガス分布に関する臨床的なアプローチが逐次開発され,実地臨床に役立つようになったことは一驚に値する.
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