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「不整脈」とは
心電図学上の不整脈という用語は心臓における興奮の発生とその伝導の異常を示す状態に対して総括的に用いられている,最近の不整脈研究に関する基礎的(形態学的・生理学的・薬理学的)知見と,臨床上の診断・治療の領域での進歩は不整脈学と名づけられるほどの集積・体系となっている.しかし,不整脈という用語そのものは適切ではない.arrhythmiaの日本語訳であれば,無調律ないし調律異常(dysrhythmia)とすべきであろう.不整脈を字義通りに解釈すれば,脈拍不整の状態を示すこととなる.したがって,最近では不整脈という用語に代わって心拍不整という用語がしばしば用いられる.この場合も字義通りに解釈すれば心臓の拍動の不整ということになる,心電図学上で調律異常ないし興奮の発生・伝導の異常の状態であっても,たとえばA-V接合部調律,WPW症候群,脚ブロックの時のように心拍は一見整となっているものもある.また,心臓の調律は異常であっても脈拍は整となっている場合として,A-Vブロック,ブロックを伴う頻拍症のようなものを挙げることができる,さらに,心臓の調律異常があり,拍動も不整となり,脈拍も不整となっているような状態,細動・粗動,多発性期外収縮などもある.ここでは本来の意味通り,不整脈とは心臓における興奮の発生,伝導の異常をすべて示すとして扱う。
不整脈と基礎疾患との関連を考察する場合には,不整脈の発生機序と発生要因とを検討し,そのような状態をきたす疾患がすべて基礎疾患としての可能性をもつものとして考慮されねばならないが,臨床的には不整脈をきたすような基礎疾患に関する理解と,不整脈から推測・診断を進めてゆく基礎疾患に対する知識とが必要となってくる.
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