全身性疾患と心電図
肝硬変の心電図
中村 芳郎
1
1慶大・内科
pp.1761-1763
発行日 1972年8月10日
Published Date 1972/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402204422
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ほとんどは非特異的変化だが……
肝硬変の心電図に関して,三辺の最近の報告1)があるが,高率に異常が認められているけれども,そのほとんどはすべて非特異的な変化のようである.代謝障害,電解質障害の際にみられる変化はすべて興奮消退過程の非特異的変化であり,WuhrmannがMyokardoseとしてまとめた異蛋白血症による心の変化も慢性肝細胞障害でおこるとされるけれども,心電図上はQTの延長とST-Tの融合斜位があるのは稀でもあるし,やはり非特異的な変化というべきである.しかもどこまでが蛋白代謝障害によるかどうか,電解質・炭水化物の代謝異常が併発していることが多くてよくわからないことのほうが多い2),というのがおそらく正しい.
ネフローゼ症候群の心電図をみても,たしかにT波平低,QT延長の例はよくみられるけれども,電解質、血圧などの影響を考慮に入れなければならないことが多くて.どこまで低蛋白血症に原因をもとめてよいかわからない,肝硬変症でもT波平低,QT延長はよくみる変化であり,時にはU波の増高などもあるけれども,そのどれが肝硬変の何に対応する変化なのかわからないことのほうが多い.
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