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小児の腹痛の訴えはかならずしも腹部疾患によらない
急性腹症とは突発性の激しい腹痛を主症状とする疾患群を総称するが,外科の立場からは,その確定的診断は明らかでなくても,緊急処置として開腹手術を必要とするという警告的意味を含んで使用される.実際にはすみやかに病変を診断し手術の必要性の有無を決定するのが望ましいが,疑いのみで急性腹症として開腹手術が行なわれる場合も少なくない.
小児では学童以上での腹痛の訴えは成人とたいして差はないが,乳児以下では腹痛は訴えないで苦しそうに泣き叫ぶのみで,既往症,顔貌,泣きかた,体位,触診時の反応などで察知しなければならない、誕生前後から幼児の前期にかけては腹痛を訴えるが,腹部以外の局所の痛みで腹痛がなくても腹痛を訴え,また恐怖のため,あっても痛くないと訴えることもある.中村の統計によれば,小児科外来で腹痛を訴える年齢は3-7歳が最も多く,かつ成人においては腹痛の90-100%が腹部疾患に由来するのに反し,小児では消化器疾患によるものは30%にも達しない.泌尿器系や体質的疾患を加えても60%前後を占めているにすぎない.肺炎,肋膜炎,感冒,アンギーナ,紫斑病,急性リウマチ熱,麻疹,猩紅熱,脳炎,白血病,貧血などの全身疾患で腹痛を訴えるものが少なくないということは小児期の特徴である.つぎに腹部疾患として反復性臍疝痛,腹性てんかん,腹性紫斑病,いわゆる自家中毒症(アセトン血性嘔吐症),便秘症,巨大結腸症などの特有疾患によって腹痛を訴える.その他の消化器系疾患として急性胃腸炎,回虫症,消化性潰瘍,肝炎,胆道疾患,膵炎,虫垂炎,腹膜炎,腸閉塞症,また泌尿器系疾患として膀胱炎,腎尿路結石,腎周囲膿瘍などで明かな腹痛を訴える.また腎炎,ネフローゼ症候群などによっても腹痛を訴えることが少なくない.
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