診断のポイント
小児の急性腹症
伝田 俊男
1,2
1国立小児病院外科
2慶大
pp.599-600
発行日 1968年5月10日
Published Date 1968/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402202207
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小児の腹痛の訴えはかならずしも腹部疾患によらない
急性腹症とは突発性の激しい腹痛を主症状とする疾患群を総称するが,外科の立場からは,その確定的診断は明らかでなくても,緊急処置として開腹手術を必要とするという警告的意味を含んで使用される。実際にはすみやかに病変を診断し手術の必要性の有無を決定するのが望ましいが,疑いのみで急性腹症として開腹手術が行なわれる場合も少なくない。
小児では学童以上での腹痛の訴えは成人とたいして差はないが,乳児以下では腹痛は訴えないで苦しそうに泣き叫ぶのみで,既往症,顔貌,泣きかた,体位,触診時の反応などで察知しなければならない。誕生前後から幼児の前期にかけては腹痛を訴えるが,腹部以外の局所の痛みで腹痛がなくても腹痛を訴え,また恐怖のためあつても痛くないと訴えることもある。中村の統計によれば小児科外来で腹痛を訴える年齢は3〜7歳がもつとも多く,かつ成人においては腹痛の90〜100%が腹部疾患に由来するのに反し,小児では消化器疾患によるものは30%にも達しない。泌尿器系や体質的疾患を加えても60%前後を占めているにすぎない。
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