特集 これだけは知っておきたい診断のポイント
XV.小児科
1.緊急疾患の見分け方
小児仮性コレラ
本廣 孝
1
1久留米大小児科
pp.1476-1477
発行日 1972年7月5日
Published Date 1972/7/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402204355
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決定的でない原因
乳幼児下痢症は従来夏期に多発傾向を呈していたが,最近8年間の当科外来3歳以下下痢児は506名で春期(3・4・5月)99名20%,夏期(6・7・8月)93名18%,秋期(9・10・11月)74名15%,冬期(12・1・2月)240名47%と夏期に比して2倍以上の頻度で,最近の乳幼児下痢は冬の疾患として特徴づけられている.症状は軽症化が著明で,抗生物質の普及,食品衛生管理の適正化,環境の改善,衛生指導の向上がその一因をなしている.月年齢別にみると,離乳初期の5カ月が最も多く37名7%,次いで果汁を与えはじめる3カ月33名7%,3カ月から12カ月で314名と全体の62%を占め,離乳期の乳児に多くみられた.
これら下痢症の原因は食餌性・体質性・腸管感染性・腸管外感染性などに分けられるが,冬期下痢症のうち,白色調を呈する下痢便に加え,嘔吐,上気道カタル症状を3主徴とし散発あるいは集団発生をきたす下痢である.本症は60年まえ伊東祐彦教授により小児仮性コレラとして提唱されたものである,近年は白色便性下痢症あるいは白痢とよばれ特異な座を占め,腸球菌説,体質異常説,感冒説,ウイルス説,腸球菌をのぞく細菌説などの原因が諸家により報告されているがまだ決定的でない.私たちは大学病院という特殊外来のため本症にあまり遭遇せず,昭和39-46年の8年間にわずか21名を経験したにすぎないが,実地医家においては冬期しばしばみられる疾患であり,諸家の見解を参考にしながら本症の診断について述べる。
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