診断のポイント
見逃がされているパーキンソン症候群
加瀬 正夫
1
1関東逓信病院
pp.1889-1891
発行日 1971年12月10日
Published Date 1971/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402203933
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パーキンソン病とL-dopaの開発
最近,パーキンソン病が一般に注目されるようになった背景には,L-dopaというすばらしい抗パーキンソン剤の開発がある.本症の薬物療法はスコポラミン,アトロンピンにはじまり,多くの合成副交感神経遮断が中核をなしてきたが,最近20年来は本症の外科療法がもっぱら脚光をあびていた.けれどもこれらの治療法は全く経験的なもので,その効果にもかなりの制限がある.このようななかで新しい神経伝導物質としてドーパミンが注目され,さらにdopaminergic nervous systemが発見され,パーキンソン病はドーパミン欠乏症候群に含まれるということになり,このような神経生化学的知見のもとに試みられたのがL-dopaである.
ところでドーパミン欠乏症候群にはL-dopaは有効であるべきであるが,パーキンソン病を含めてパーキンソン症候群のすべてにL-dopaは必ずしも有効ではない.そこでパーキンソン症候群にはどのようなものがあるか,そしてそれがドーパミン欠乏症候群に属するかどうかということも臨床的には重要なことであり,パーキンソン病を含めてパーキンソン症候群が広く注目されるようになった.しかし反面,パーキンソン症候群だけに注目して,可能性ある本態を見失わないように注意することもぜひ必要なことである.
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