一般医のための救急診療のコツ
日(熱)射病
藤田 五郎
1
1自衛隊衛生学校
pp.1368-1369
発行日 1971年8月10日
Published Date 1971/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402203804
- 有料閲覧
- 文献概要
日(熱)射病の正しい認識
病態 日(熱)射病(Sun (Heat) Stroke)というと,食塩水を飲ませたり,注射したりするものという考え方が支配的であるが,正しい救急診療を行なうのには,何といっても,その病態を正しく知っていることがたいせつであろう.日(熱)射病というのは,端的にいえば,"うつ熱"であり,体動による体熱の生成と放熱とのバランスがくずれた状態である.
高温高湿度の環境のもとで激しい労働をして,しかも,直射日光で輻射熱が強かったり,ピッタリと衣服を着けていたりすると,ますます悪循環が生じて,体熱はうっ滞する.ファンベルトの壊れた自動車を,しかもエンジンに毛布をかぶせて急な坂道をふかしながら走行しているようなものである.自動車の場合には,エンジンが焼きついて煙を出すようになるし,人間の場合には,酸素欠乏に弱い臓器が順々にやられて,脳や肝臓,次には心臓の障害を生じて,ついには視床下部の体温調節中枢が支障をきたして,体温は上がりっぱなしになり,肝臓の広範な壊死も起こってくるというのが,日(熱)射病の病態.ただ,日射病は直射日光下で,熱射病は,高温高湿の部屋で発生するという環境の違いだけである.
Copyright © 1971, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.