話題
—肥満・こびと症の治療に積極的方策—第67回日本内科学会総会から(1970年4月1-3日・福岡)
尾形 悦郎
1
1東大第1内科
pp.1095
発行日 1970年6月10日
Published Date 1970/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402203247
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肥満と糖・蛋白・脂質代謝
今回の内科学会総会では,特別講演およびシンポジウムには,糖・脂質代謝との関連でホルモンについて触れられたもの以外,内分泌学分野の講演はなかった.そこで一般演題講演の中からトピックをひろって紹介する.
肥満は,従来体質と栄養の面からばくぜんと理解されていた.その間,脳幹部に異常を伴う疾患の一部に,著明な過食と体重増加が見られることや,同様の病態が実験的に視床下部を損傷することによりラットで再現されることなどから,肥満の病因として,食欲中枢異常のための過度の摂食,過栄養が重視され,したがって治療も食事の制限および薬物による食欲の抑制に重点がおかれていた.ところが,油谷博士ら(徳大・内科)の研究発表によると,このような実験的視床下部損傷ラットでは,その食事量を正常ラットのそれと同じ量に制限し体重増加を防止しても,体成分において蛋白の減少,脂肪の増加がみられ,また血中インシュリン値の上昇,血糖の低下,脂肪組織の脂肪酸組成の変化などがおこっている.この動物実験の成績が,そのまま臨床の肥満にあてはまるかどうかは即断できないが,私たちが肥満患者の治療にあたる場合,バランスのとれた食事を少量とるという消極的な治療方針以外に,その病態の一部に糖・蛋白・脂質代謝障害のある可能性を考え,より積極的に患者を管理し,治療していくことの必要性が示唆される.
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